DE ROSA TITANIO Soloをフレームから組み立てる【ロードバイク組立記】シリーズ。
前回はCampagnoloのリアディレイラー調整まで完了しました。
今回はフロントディレイラーの調整を行っていきます。
準備するもの
ヘックスレンチ
フロントディレイラーアライメントツール
トルクレンチ
CAMPAGNOLOのフロント・ディレイラー調整
TITANIO SoloのコンポーネントはCampagnolo SUPER RECORDを組み付けます。コンポーネント一式、つまりGroupset(グループセット)は海外オンラインショップのMerlin Cycleから購入しました。
フロントディレイラー(FD)の調整はFDに付属の取扱説明書またはオフィシャルサイトを参照しながら行っていきます。
また海外のロードバイクお役立ちサイトでおなじみのGCN(Global Cycling Network)の”How To Fit A Campagnolo Front Mech”という動画も非常に参考になります。
そしてもう一つ、ART’S CYCLERYというカリフォルニアの老舗ロードバイクショップによる”Ask a Mechanic: Campagnolo Front Derailleur Tuning”という動画もわかりやすい説明で参考になります。
詳細はこれらのマニュアルや動画にとてもわかりやすく説明されているのでお任せするとして、例によって本エントリーではポイントに絞って書いていきたいと思います。
フロントディレーラーのアライメント
フロントディレイラーをフレームに組み付ける際のアライメント(基準となる位置に正しく合わせること)は重要な作業ですが難しくはありません。チェーンをインナーに落とした状態で以下の2点を満たすように固定します。
- FDプレートとチェーンリングの歯先の距離は1.5〜3[mm]の範囲
- FDプレートとチェーンリングが平行


GCNの動画で紹介されているように、アライメントをより簡単&正確に行うためのCampagnolo公式の専用ツールが出ています。Campagnoloもマニュアル内でこの専用ツールを必須としていますが、FDのアライメントはそう何度も行うことではないので私は持っていません(^^;)
ショップの方ならこの専用アライメントツールがあると作業効率がグンと上がることでしょう。
フロントディレイラー調整のポイント
FDのアライメントは簡単ですが、作業の関門となるのは調整です。FDの調整で重要なポイントは3点あります。
- チェーンがFDプレートに擦れないこと → FDプレートの可動範囲調整
- クランクがFDプレートに擦れないこと → FDプレートの可動範囲調整
- シフトチェンジがスムーズかつ正確に出来ること → シフトケーブルのテンション調整
FDの調整は上記3点全てのセッティングが決まらないと走行中に気になって仕方がないため、RDよりも丁寧な調整が求めれます。その一方でFDは調整経験がないとケーブルテンションの良し悪しが掴みにくいため、RDと比較して調整の難易度は高いと感じます。
個人的には“FDを的確に調整できること”が“バイク組み立て&メンテは自分一人で出来る”の最終関門だと思います。とはいえFD調整も慣れれば難しいことはありません(^o^)
FDの調整手順
FDの調整は以下の手順で行っていきます。
- FDプレートの可動範囲調整(インナーギア時)
- シフトケーブルのテンション調整
- FDプレートの可動範囲調整(アウターギア時)
ちなみにRDでは先にローギア/トップギア両方の可動範囲調整を行ってから、最後にシフトケーブルのテンション調整を行いました。(理由は関連記事に記載)
一方、FDでは上記③のようにアウターギア時の可動範囲調整は最後になります。
理由は、アウターギア時のFDプレートの可動範囲はケーブルテンションとの釣り合いで成り立っており、正しい変速を行うためにはシフトケーブルのテンション調整が優先されるためです。そのためFDはケーブルテンションが決まってから最後にアウターギア時の可動範囲調整を行うことになります。
FD調整 その① – FDプレートの可動範囲調整(インナーギア)
フロント=インナーギア、リア=ローギア(歯数が一番多いギア)の状態で内側のプレートとチェーンの間隔が0.5[mm]以内になるように調整します。この調整の目的は“チェーンがギアの内側に落ちないようにするため”です。

ちなみに自分の場合は0.5[mm]という数字よりも“チェーンがプレートに擦れる音が消えるギリギリの位置”を探るようにしています。
プレートの位置は上に抜粋したマニュアルの通り”B”のネジを回して調整します。ネジを回す方向とプレートの移動方向の関係は以下の通りです。


FD調整 その② – シフトケーブルのテンション調整
続いてシフトケーブルのテンション調整を行っていきます。
- フロント変速する左手側のエルゴパワーの親指のシフトダウンスイッチをクリック感がなくなるまで押してインナーギア用のセッティングにします。※シフトダウンスイッチだけ空打ちしているとスイッチが元の位置に戻ってこない場合があるので、シフトケーブルを手で引っ張りながらやるのがコツです。
- シフトケーブルを通し、ワッシャーに挟んで留めます。ケーブルは緩すぎず、張りすぎず、適度なテンションで留めます。テンションの具合というのは経験ですが、何度かやるうちにわかってきます。最初は指定の5Nmより弱いトルクで仮留めして、試行錯誤の末にシフティングが決まったら5Nmで本締めします。

ケーブルを掛けたらシフトアップレバーを操作しながら以下の要領で調整を行っていきます。
- シフトアップレバー3クリックでアウターギアに変速したら → ケーブルテンション良好 → 次の章『FD調整 その③』へ
- シフトアップレバー2クリック以下でアウターギアに変速したら → ケーブルテンションが高い → 少し緩めてリトライ
- シフトアップレバー4クリック以上でアウターギアに変速したら → ケーブルテンションが低い → 少し張ってリトライ
なお、この作業をするときは“FDプレートの動き過ぎ”に注意が必要です。

上はFDを調整し終えた後の写真ですが、FDのプレートとクランクアームとのクリアランスがほとんどありません。調整途中でFDプレートが外側に動きすぎるとクランクと擦って傷ついてしまいます。この問題を回避するのが次の章の『FD調整 その③』です。
FD調整 その③ – FDプレートの可動範囲調整(アウターギア)
シフトアップレバーをジャスト3クリックしてアウターギアに変速できるようになったら、フロント=アウターギア時のFDプレートの可動範囲調整を行います。

上のマニュアル抜粋によるとリア=トップギアの時(Fig.19)とリア=ローギアの時(Fig.20)の2つとも満たすように調整するよう指示されています。ただし、フロント=アウターギア&リア=ローギアはチェーンが斜めになって機材への負荷が大きく、推奨されないギアの組み合わせです。よって、主にリア=トップギアの場合(Fig.19)に注目して設定していきます。
プレートの位置は『FD調整 その①』に抜粋したマニュアルFig.15の”C”のネジを回して調整します。ネジを回す方向とプレートの移動方向の関係は以下の通りです。


ちなみに“Cのネジを回す時は一旦インナーギアに落とす”のがコツです。
- アウターギアの状態はシフトケーブルのテンションが高い状態なのでネジを回すのに力が必要です。インナーギアの時は弱い力で回せるのでネジ頭を潰すリスクを避けられます。
- Cのネジを回してFDの可動範囲調整を行うと、アウターギアへ持ち上げる時のケーブルテンションが微妙に変化します。そうすると3クリック変速が2クリックや4クリックに狂ってくるので、再度ケーブルのテンション調整を行う必要があります。“インナー状態でCのネジを少し回して3クリックシフトアップとFDプレートのクリアランスを一緒に確認”を繰り返しながら設定を追い込む、というのが手間なようで近道な正攻法です。
以上の工程を経て、3クリックでシフトアップかつFDプレートとチェーン間のクリアランスが決まったら、念のためシフトアップ/ダウンを繰り返して変速に問題ないか、チェーン落ち等が発生しないかを確認します。問題なければこれで調整完了です。
FDの調整は動画を眺めたり文章を読んでいるだけではわかりにくいところも多いので、実際に触って慣れるのが近道です。一方で、機械的な仕組みを想像できないまま触ると調整が迷宮入りしがちと想像します。ということで自身が作業を通して得たものを余談を交えて残してみました。どなたかの作業の参考やヒントになれば幸いです。※ただし、自分での組立ては全て自己責任と肝に銘じて楽しみましょう。
ということで、初回から随分と時間が掛かりましたが【ロードバイク組立記】はこれにてひとまず最終回です。次回は番外編で完成写真を紹介して、DE ROSA TITANIO Soloの組立てに関するエントリーはひと区切りとしたいと思います(^^)
つづく。
お疲れ様です。3クリックに調整ということが英語が邪魔して理解できませんでしたが、あなたの教えで理解できました。campyは2台組んでみました。ColnagoのV2rとClxです。前者は12Sのレコード、後者は11sのコーラスです。カンパのテック動画を参照してましたが、クリック数の解説が理解できず、フロントの不調を解決できませんでした。ありがとうございました。
FDの調整方法の説明がとてもわかりやすく、とても参考になりました。ありがとうございました。